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 ロボットの導入と未来志向型クリニックの実現に向けて:クリニックにロボットを導入する意義

 

 昨年開業した当院は、肝臓を中心に生活習慣病、脂肪肝、メタボ・ロコモ管理と最新の知見を応用し幅広く患者さんの健康管理に必要な情報を提供してきました。昨今の医療現場は、先進医療や先端機器を推進する大学病院と、健診分野を立ち上げ最新機器を入れながらも受診者数を意識するばかりにフォローが出来ていない健診センターの2極化が進んでいます。内科クリニックは生活習慣病の管理に従事しているのみで、それ以外のことに挑戦する機会もなければ気力を失いかけています。今こそ、当院がその狭間を突き進み、健診でフォローすべき症例や大病院に繋げるべき症例を橋渡しできるような存在に成りたいという強い思いで起業しました。

 実際、幅広い分野を捉えていく場合に、考えるべきことも多くあります。利便性を重視するあまりに医療の質が落ちてしまっては仕方のないことです。便利に利用して頂きながらも、ホスピタリティーをあげ患者さんの信頼を得るためには、準備と努力が欠かせません。普遍的な価値を継続的に維持するために、当院が考えたことはロボットの応用です。まだ、この分野はクリニックでの使用経験は乏しいですが、多岐にわたるクリニック業務において、患者に普遍的なサービスが可能になると考えました。

 我々のクリニックは、“アートスペース絆”を設置したように、アートを通して患者さんに心の癒しを提供し、同時に、医療スタッフにとってもニュートラルな医療の提供を目指しています。これは、私がコロナ禍で経験した、医療従事者が常に自分自身をみつめ心の安定を図ることこそが普遍的な診療体勢、恒常性のある的確な判断に繋がるという考えが根底にあります。大きくは報道されませんでしたが、コロナにより多くの優秀で勇敢な医療スタッフを失ってきました。当時は東京医療センターの診療科長をしていたので、その現場に直面しました。大病院の上層部は現場を見ずして経営に専念するばかりに、医療従事者の人間らしい生活や行動は過度に制限されました。不安定な心境の中、自分の思っている医療が出来ずに、その葛藤の中辞めていく姿を多く見てきました。命を扱う仕事は、様々なストレス環境下で、独りよがりにならないバランス感覚が大切です。特に、自身の体調や心の乱れで患者に不利益をもたらすことは許されず、常に五感を研ぎ澄まし、ニュートラルな状態から自分の五感に問いかける姿勢、自分の信念、ポリシー、育まれたバランス感覚を取り戻すことが必要でした。

 私はコロナ禍で美術館によく足を運びました。そこで気付いたのは、アートこそが普遍的な価値観。誰からも強制されるものではなく、そこで何を感じようが、どう思うが自由なのです。自分に問いかけたときに、失いかけていたものが取り戻せたり、新たな感性を感じたり、。自分自身をニュートラルに戻し、明日への診療に平常心でのぞめる原動力になると感じました。クリニックにこうしたスペースを設けたのも、こうした思いからです。

 ロボットにもそうしたアートに匹敵するような普遍的な価値観があると信じています。その仕事の一部を託し担えるようになれば、診療の普遍性が遂行でき、さらには医療従事者がより自分の専門分野に専念できます。医療DXを推進する中、人々も利便性を重視し、本来のアナログ医療から離れてきている現状を感じます。医療は人と人との心の信頼関係の上で成り立っており機械化は望まないといった旧体制ではもはや通用せず、他の分野では急激なスピードでデジタル化が進んでいます。多岐にわたる医療の本質を担保するためには、医療DXを推進しロボットと共に未来の夢ある医療体制を推進したいです。ロボットと共存することで、スタッフが患者さんの目を見て話す時間や、手で触れて診察する時間をより多く確保できます。 私が目指しているのは、クリニックの理念や魂といった普遍的な価値観をロボットにも継承してもらうことです。最初は、ロボットとの準備や検証実験など多くの課題を抱える形にはなりますが、それが解決され同じ方向に診療理念が向けられたときに、新しい診療体勢、ロボットと共に歩む未来のクリニックが誕生することを確信しています。アートと医療の融合そして、ロボットが担える医療が誕生した時、“人間らしい医療の普遍性”を未来へ継承できると信じています。クリニックの挑戦に是非、ご理解とご協力をいただき、次世代の夢ある医療を継承していきましょう。