アルコールチーム医療こそ、アルコール診療の最後の砦

最近では、これまで「アルコール依存症」と呼ばれていた状態を「アルコール使用障害(AUD)」と表現するようになりました。偏見を減らすための大切な変化であり、治療の考え方も広がっています。
以前は精神科の病気と考えられることが多かったのですが、今では“減酒治療”が正式に認められ、減酒を助ける薬やアプリも保険で使えるようになりました。お酒の問題は、内科でもしっかり向き合うべき病気として位置づけられつつあります。
特に消化器内科では、肝硬変の原因としてアルコールが最も多く、今後もアルコール関連の病気が増えると予想されています。そのため、診療体制を整えることは急務です。
当院ではまず、治療の第一歩となる「飲酒量の正確な把握」をロボットに手伝ってもらっています。医師に直接聞かれると、どうしても少なめに答えてしまう方が多いため、ロボットが聞くことで本当の飲酒量を話しやすくなるのではないかと考えています。また、アルコール使用障害のチェックに使われる「AUDIT」というテストもロボットに搭載し、診療の中でもスムーズに評価できるよう工夫していく予定です。
しかし、お酒の問題は「飲み過ぎをやめればいい」という単純なものではありません。
栄養不足、気持ちの落ち込み、社会的な孤立、再発のくり返しなど、さまざまな困りごとが重なりやすく、内科医だけで支えるには限界があります。
だからこそ必要なのが、チーム医療です。
肝臓内科医、精神科医、看護師、栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカーなど、さまざまな専門職が力を合わせることで、身体の治療と心のケア、そして生活面のサポートを同時に進めることができます。
この「多職種チーム」こそが、アルコール診療の最後の砦となり、患者さんを支える大きな力になります。
本来、このようなチーム医療は総合病院が担うのが理想です。しかし、最近は病院が急性期医療に力を入れざるを得ない状況が続き、アルコールの問題にじっくり向き合う体制が十分に整っていない現実があります。その結果、治療が必要な方を受け入れきれないケースも生じています。
だからこそ、これからはクリニック同士が連携し、地域全体で支え合うネットワークづくりが欠かせません。
我々も、院長が理事を務めるアルコールアディクション医学会を通じて、地域で支えられる仕組みづくりを提案していきたいと考えています。
アルコール診療の最後の砦は、ひとりの医師ではなく、チームです。
そして、そのチームが地域に広がることで、より多くの方が安心して治療につながれる未来を目指しています。

