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 便秘薬アミティーザ講演会 大阪で ~便秘薬の学びから見えた「腸」と「脂肪肝」の深い関係

 昨日、大阪で行われた講演会に参加し、小腸の上皮細胞にある ClC-2 というチャンネルを活性化して水分分泌を促し、便を柔らかくする便秘薬「アミティーザ」について改めて学びました。この薬は単に便を出しやすくするだけでなく、小腸の粘液バリア(ムチン層)を守り、炎症を抑える働きも持っています。過去には、小腸のバリア機能を保つことで肝硬変患者さんの高アンモニア血症が改善したという報告もあり、腸と肝臓のつながりを強く感じさせる内容でした。

 脂肪肝を専門に診ている立場からすると、こうした知識は便秘薬の使い方を見直す大きなヒントになります。脂肪肝の患者さんは便秘を合併しやすく、その背景には腸内細菌叢の乱れがあると考えられています。今回の講義を自分なりに整理してみると、腸と肝臓の関係がより明確に見えてきました。

 細胞膜の材料であるホスファチジルコリン(PC)は、本来は腸と肝臓を守る“味方”のような存在です。しかし腸内細菌のバランスが崩れると、つまりPCが不足しても過剰になっても代謝異常が生じて脂肪肝が出来る訳です。

 まず、PCが不足すると、肝臓から脂肪を運び出す VLDL が作れなくなり、脂肪が肝臓に溜まって脂肪肝が進みます。ムチン層も薄くなり、小腸のバリアが壊れやすくなるため、痩せているのに脂肪肝というタイプの患者さんに多く見られます。このタイプの便は硬く、コロコロした兎糞状になりやすく、アミティーザがとても相性の良い薬だと感じます。

 一方で、肉やチーズ、卵などを多く食べてPCが過剰になると、腸内細菌がTMAO(Trimethylamine N‑oxide:トリメチルアミン N‑オキシド)を作りやすくなり、今度はPCが“毒の材料”として働いてしまいます。TMAOが増えると胆汁酸の合成が低下し、LDLコレステロールが上がりやすくなり脂肪肝が形成されます。ここで思い浮かぶのが、胆汁酸トランスポーターを阻害する「グーフィス」です。グーフィスは便秘を改善するだけでなく、胆汁酸の産生を促すことでLDLコレステロールを下げる方向に働く可能性があります。さらに、大腸に流れた胆汁酸はGLP-1の分泌を高め、インスリン抵抗性の改善にもつながると考えられています。メタボ体質の方に多いこのタイプでは、グーフィスを中心にしながら、必要に応じてアミティーザを組み合わせるという治療戦略が理にかなっていると感じました。

今回の講演を通じて、脂肪肝診療における便秘薬の位置づけを改めて整理することができました。明日からの診療に活かせる学びが多く、貴重な機会をいただいた関係者の皆さまに心から感謝申し上げます。