呼気でわかる代謝状態 ポータブル代謝トラッカーLumenを使用して
最近、イスラエル発のポータブル代謝トラッカー「Lumen(ルーメン)」を個人輸入して使い始めました。海外留学中の友人に協力してもらい、ようやく手元に届いたこの小さなデバイス。実は、呼気中のCO2濃度を測ることで、今の自分の代謝状態--つまり「脂肪」か「炭水化物」か、どちらを燃料として使っているか--を判定してくれるのです。
使い方はとてもシンプル。息を吹き込むだけで、CO2濃度に応じたスコア(1-5)が表示されます。
スコア1-2:脂肪中心の燃焼状態
スコア3:脂肪と糖質の混合
スコア4-5:糖質中心の燃焼状態
このスコアをもとに、専用アプリがその日の食事・運動・睡眠のアドバイスを提案してくれるのも魅力です。
・・・呼吸からわかる代謝の仕組み
Lumenの原理は「呼吸交換比(RER)」という考え方に基づいています。これは、呼気中のCO2とO2の比率を測定することで、体がどのエネルギー源を使っているかを推定する方法。以前、間接熱量計を使って脂肪燃焼能力を調べたことがありますが、Lumenはその簡易版とも言える最新テクノロジーです。
・・・脂肪燃焼が多く見られるようになると、
代謝の柔軟性が高まっているサイン。空腹時や運動時に脂肪を効率よく使える体になっている可能性があり、食事や睡眠、運動の質が整っている状態、インスリン感受性の改善も期待できます。
・・・糖質優位になるのはどんなとき?
一方で、スコアが高く糖質燃焼が優位な場合、以下のような状況が考えられます。
①食後(特に高糖質食):血糖値が上昇し、インスリンが分泌されることで脂肪分解が抑制され、糖質が優先的に使われる
②激しい運動中(特に無酸素運動):筋肉が即効性のあるエネルギーを必要とし、糖質(グリコーゲン)を主に使う
③ストレス時・緊張時:コルチゾールやアドレナリンの影響で血糖値が上がり、糖質が優先される傾向に
④睡眠不足・体内時計の乱れ:インスリン感受性が低下し、糖質代謝が不安定になるが、脂肪燃焼はさらに抑制されやすい
⑤代謝の柔軟性が低いとき:糖質から脂肪への切り替えがうまくできず、糖質に依存しやすくなる
これらの状態では、脂肪よりも糖質が優先的に使われる傾向があります。つまり、Lumenのスコアは、日々の生活習慣や体調のバロメーターにもなり得るのです。
呼気ひとつで、体の内側のエネルギー選択を可視化できる時代。Lumenは、私たちの代謝という"見えない営み"に、そっと光を当ててくれる存在かもしれません。運動療法や食事療法を軸とする当クリニックの生活習慣病指導において、日常の成果を見える化できる方法、つまり自分で注意して行っている改善策が実際に効果を発揮しているのか否かを、よりリアルに評価できる方法をこれからも模索し、モチベーションの向上に繋げていこうと考えています。